偽デジタル写真屋日報@はてな保管庫

はてダ終了に合わせてログ移行させました。ところどころリンク先が死んでるかもしれませんが仕様です。

今さらVectis S-1テストレポート

私とAPS

いや、正直APSって興味のない規格だったんですよ。35mm機材がごろごろしているのにわざわざ新しい規格に手を出すメリットが見つからなかったし。
なのでAPS初期の頃にAPS写るんですを買って、「小さいのにそこそこ写って便利だけど、あんまりメリットを感じないなぁ」と思ってそのまますっかり忘れていたんですね。
じゃあ何で今さら興味を持ったかというと、中古相場の下落。ただでさえ下がりまくってる中古銀塩カメラの中でもAPSの扱いはさらにひどく、昔売れまくった初代IXYなんて5千円札でお釣りが来るくらい。当時システム一式組んだら10万近くなったAPS一眼でさえ1万前後という相場があってないが如くの扱いを見ていたら「変なもの買い」の血が騒ぐじゃないですか。
ということでヤフオクのアラートに仕込んで2ヶ月弱、ようやく今回こいつを落札したという訳です。

Vectis S-1ってどんなカメラ?

APSの規格が出て間もなく、ミノルタが「これからはAPSだ!そしてやはりハイエンドラインにはシステム一眼が必要だ!」…と(思ったのかどうかは分かりませんが)力を入れて投入してきたAPS一眼カメラです。このS-1はミノルタAPSカメラの中では最上位モデルに当たり、一眼タイプの普及機としてはVectis S-100なんてのも出ました。
特徴としては専用マウント化による小型で防塵防滴なボディ+レンズ。あとデザイン的にはオリンパスE-300のようなペンタプリズムを使わないファインダーの採用なんてのがあります。
レンズシステムは標準ズームや望遠ズーム、高倍率ズームの他にミラー望遠や単焦点マクロなどなかなか豊富なラインナップを持ち、その全てが防塵防滴仕様という凝ったものでした。
しかしこれだけ凝ったものを作ってもAPS自体がいまいち普及せず、末期にはお約束の叩き売りコースに。レンズ付きで新品2万弱なんて話もあったようです。
なお、このレンズマウントを利用してRD-3000なんていうデジタル一眼レフも発売されましたが、こちらもD1ショックに巻き込まれてあまり話題にされなかったりとある意味ミノルタらしい道を歩んでます。こいつもCCD2枚重ねとか微妙にマニアックな仕様で面白いんですけどねえ。

第一印象

小さいです。フィルムサイズの小さいAPSに合わせて新規でボディを起こしているだけのことはあります。現行のハイエンドコンパクトデジカメの大きさを想像すると分かりやすいかもしれません。
ボディの質感は並。普及クラスのプラボディって感じなんで質感とかそういうものはハナから期待してはいけません。でも安物ぺなぺな感がないのは偉いですね。デザイン屋さん頑張ってます。
操作系はシンプル。背面ダイヤルで大半の操作を行いますが、このカメラの性質からするとフルオートでカメラ任せにして撮るっていう方が合っているかもしれません。雰囲気としてはα303とかαSweetとかあの辺の操作系に近いんじゃないでしょうか。
なお、ストロボは自動ポップアップ式。動作ギミックはなかなか可愛いです。
ファインダーは山がやや掴みにくいものの明るくて見通しがいいです。見えやすさという点ではAPS一眼の中では上位に入るんじゃないでしょうか。そもそも対抗機種がないという突っ込みはナシで。

フィルムを入れて使ってみました

APS判の感度100のネガフィルムってないんですね…。ということで200のネガを詰めて1本流してみました。
AF速度は正直遅いです。動体を追いかけようなんて思ったらいけません。あと暗めの室内だと途端に合焦速度が落ちます。低コントラストなものへの合焦は諦めた方が正解。
ただし精度は悪くないです。35mmより精度が要求されるからこの辺はしっかり作っているのかも。この一点でAFの遅さが救われてるという感じがしますね。遅くて精度悪いAFだったら目も当てられませんから…。
AE精度はネガに合わせているのか、ややオーバー目に振れる傾向。でもこれってミノルタ全般に言えるような気もします。DiMAGEもちと引きずられるんだよなぁ。
動作音は比較的静かな方。ミラーショックも小さめ。シャッター音は「ぱこーん」って感じの軽めの音なんで好き嫌い分かれるかなぁ。ただショック自体が小さいのでスローシャッターでもなかなか粘れます。
巻き上げは秒1コマなんでまったりしてます。散歩の友には必要十分。

1本流した感想

とにかく軽いのはそれだけでメリットがあります。コンパクトカメラの感覚で使えるというのは気楽に持ち出せるということに繋がるので、気軽にたくさん写真を撮りたい人にゃいいです。
あと16:9の長いフォーマットはそんなに違和感ないですね。ちょっと持て余すときもあるけれど視野が広く感じるのはそれだけで結構新鮮。特にここのところデジカメの4:3に慣れてたんで、この広さはなかなか気持ちいいものがあります。

付属の22-80mmはどうよ

全域マクロで40cmまで寄れるので、4-5.6とやや暗めなことを除けば大変便利なレンズです。写りは焦点域によってちょっと周辺が甘いかなぁ、と思わせられるときもありますがかなりいい感じ。35mm判入門一眼のおまけズームと同列にして見ると失礼に当たるかもしれません。
これならWeb上で評判いいのもうなずけます。
あと歪曲がこの倍率にしては少なめなのも好感。なかなか頑張ってます。

フジカラーCDとの相性

APSをスキャンする環境を持ってないので近所のDP屋さんにCD作成を依頼しました。
上がりは35mm判とあまり変わらず。まあフィルムサイズが小さくなるのでその分やや甘くはなりますが、その分縦横比の大きさで相殺される感じですね。プリントするとちょっと値が張るのが難点ですが、APSを使うなら積極的にHサイズのワイド感を楽しむべきだと思います。
あとこれはAPS独特のメリットなんですが、DP屋さんでCDを作るとExifヘッダに撮影日時と撮影情報が記録されます。これはデジカメのExifに慣れた人間としては非常に便利と言えますね。正直これだけのために同時CD作成を依頼する価値があると言ってもいいかもしれません。
なお、Hサイズで撮影してもサムネイルはCサイズになるのは仕様らしいです。インデックスを見て焦らないようにしましょう←慌てたらしい。

結論

1万でお釣りが来る一眼にしては相当出来がいいです。ちょっと安めの動作音に目を潰ればファインダーもいいし持った感触もなかなか。しかも悪天で惜し気もなく使えるとなればお気楽散歩カメラとしてかなりいい素質があると言えるのではないでしょうか。APSというフォーマットが気にならない人でミノルタに抵抗のない人は是非。

実写はこんな感じ

フジカラーCDで取り込んだものに若干レタッチを入れてるので、こんな雰囲気で撮れるという目安としてご覧下さい。

歩きつつ一枚。9:16の縦位置は構図取りが難しいです。

マクロ風味。ちょっと暗いんで手ブレしているかも。

参考ページ

あまりこのカメラについて書かれているページってないんですよね。Web検索しても一般的な35mm一眼に比べるとかなり数は減る印象があります。やはりAPSというフォーマットが人を遠ざける要素があるんでしょうねえ。私も最近まで見向きしなかった訳で。
そんな中で調べるのに参考にしたページをいくつか上げておきます。